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  • 執筆者の写真山下菜美子プロデュース namipro

ナミプロ本インタビュー抜粋⑤ 堤泰之編

ナミプロ本インタビュー記事抜粋掲載、第5回目は、作・演出の堤泰之さんです。

文字数の都合でカットになった部分をあわせつつ、堤さんご自身が20年以上前に手掛けた【漂白剤】について振り返ります。

例によってネタバレ・解釈に関わる部分は伏せております。ご了承くださいませ。

漂白剤 誕生秘話

N そもそもこの漂白剤は、ラフカットの演目ですよね。95年の1回目ですか?

「元々はその時、二人芝居をやろうと思ってたのね、ラフカットの初年度で。【ピカレスクホテル】のシリーズも当時やってたから、ラフカットの最初で、それこそ俺の名刺代わり、ってことでやろうと思ってたんだけど。で、女性(【漂白剤】初演・再演に出演、かないまりこさん)の方は決まったんだけど、相手役がいなかったんだよね、オーディションを受けに来た方々の中に。どうも、ちょっと、男性が悪いっていうより、かないとの組み合わせがピンと来なくて。だったらもう、一人芝居にしてやれって。」

N ラフカット、今年で何年目ですっけ。

「今年25周年」

N すごいですね!私、いろんな人が受けて『落ちた』って聞きますよ。

「色んな人に、何千人何万人の人達に恨まれながら生きてますよ(笑)」

N でもそれはしょうがない。それはその人が駄目なのも勿論あるかもしれないけど、探してる役に合わないっていうのもあるだろうし。

「そうそう。オーディションだからね。」


N 【漂白剤】って、なんで、ああいった内容になったんですか?

「まず一人芝居をやるにあたって、どういうシチュエーションが面白いかな、っていうのを考えて、****が一個あって、当時は両面客席だったから、****がひとつあれば他に何もなくても」

ストーリーはどうでも良かった

N そうか!ラフカットって短編4本で1公演だから、セットチェンジのことを考えたら。

「そう。だから本当に ****っていうのを思いついて、そこに******がいてっていう順番だから。****ありきだから。ストーリーはどうでも良かったんだよね。****の中の**とどう関わっていくと面白いのか。だから単純に、****の**に*かけて乗って、上から********したら面白いんじゃないか、とか*****持って動いたら面白いんじゃないか、っていうのを繋げて、お話っていうよりシチュエーションありきで始めて。そういう意味でそんなにね、役作りとか、どうでもいいっちゃどうでもいいの(笑)」

N どうでもいい。言い切っちゃった。

「《こういう女の子であってほしい》みたいなこだわりは無いんだよね。」

N そこは役者に委ねてるって事ですよね。

「どんな事でも、筋道を自分で作ってくれれば

N たしかに本当にすごいですよね。段取りが(笑)段取りだらけ。演者さんはほんとに大変な芝居だと思います。


N 上演許可をお願いしに行った時に、台本のデータが無いんだって言われて(笑)

「でも、資料映像が残っててほんと良かったね。それも8ミリのテープだから。」

N そこからDVDに焼いていただいて。

「本当に良かった。もう一本、別の芝居でDVDに落とそうとしたら、8ミリテープが途中で切れちゃって出来なくて。だからこれも、ヒヤヒヤしながら移してたんだけど、なんとかなって良かった。

N 持ってる持ってる。良かった。本当にこれは見えない何かの力が今回の公演を打ってもいいよって言ったんだと思います。

「ほんとそういうことだよね。これ何年か遅かったら、もうテープ切れちゃったかもしれないし。」

N 危ない危ない。本当にアナログのものは、大事なものほど早くデジタル化しなきゃダメですよ。紙の台本も無くて、本当にどうしようかと思ったけど、良かったです、資料映像が残ってて。その舞台映像から台本の書き起こしができたから。じゃあこれ、何も無くて、一から堤さん書き直してくださいってなっても、もう無理だと思うんですよ。あの頃の若い時の『何かやってやるぞ』的な堤さんじゃないから。

「そうね。もう枯れちゃってるからね(笑)」

大事なのは、ただ《居る》こと

N そういうこと言わない(笑)それはそれで違う形になってるかもしれないけど、でも今、こういう題材で堤さん書きたい事ってあります?

「無いね。無いよね」

N 食い気味に来ましたね(笑)

「書きたいとも思わない。頑張る気になれない」

N やっぱ頑張らないと無理ですか。

「無理。エネルギー使うから。読んでるだけでしんどい。まあ、ただ内容的にはしんどいんだけど、見せ方とか、こういうことがやりたかったわけだから、書いた当時は。ビジュアル的にこういう風にやれば面白いんじゃないか、綺麗なんじゃないか、とか。音楽的にこの曲を使ったらかっこいいとかそういうのは出来なくはないんだろうけど。まあ、あんなに何年も前のパッションはないね(笑)」

N 堤さんの中でも相当異色作ですよね一人芝居って他にも?

「書いてないね。」

N そうですよね。唯一、ですよね。やっぱり他には無いですよ。一人芝居にしても、何から何まで設定から内容まで。

「まず**と話してる時点で相当おかしい」

N いわゆる一人芝居のイメージって、いっぱい喋ってる感じがありますけど、そういう意味でもなかなか無い一人芝居なんでしょうね。

「喋らないもんな、ほんとに。ほんと喋んない。資料映像を見ても驚いたもんね。まだ喋んないのかってくらい(笑)だからそれも、そのシーンが残るかどうかわからないけど、大事なことは、ただ《居る》って事なんだよね。それがやっぱり役者さんは一番難しいと思う。なんかやんなきゃいけないとか、なんか喋んなきゃいけないと思わずに、ただ《居る》っていう。」

N 何も起こらないのに、ただ《居る》って本当に難しいかも。やっぱり役者さんって、何かをやらなきゃって、表現しなきゃって思う生き物だから。そこから一個先の話じゃないですか。ただ《居る》だけでいい、っていう状態になるって。その人(役)が生きてればいいってことだと思うんですけど。それはほんとに難しいことだと思います。

余白だらけの台本

N 早く稽古したいです、私。やっぱりね、私一人の団体なので、全部自分で決めて、全部自分で判断して、もちろんそれを指示して動いていただく方もいるんですけど、何せ一人だから。何て言ったらいいんだろうな…私は今も全部の責任がズシンとのしかかってきてて、でもこれをやるんだって奮い立たせて、気張って、感情の起伏が激しすぎて頭おかしくなるけど、

「まあ、ある意味《山下菜美子一人芝居》(笑)」

N ってことですよね(笑)日常が浮き沈み激しいし、なんか、やるって決めて、どうしてもやりたかったから【漂白剤】を。それはめちゃくちゃ楽しみなんですけど。だから撮影してても、ビジュアルの事とかわからないけど楽しいし、私がお願いした色んな人たちが、色々なアイデアを持ってきてくれる、っていう事がもう幸せで、ちょっと泣いたし、陰で(笑)でも同時に、これだけの人たちを巻き込んでしまった、みたいな責任がすごくあるし、中途半端にやっても何にも意味が無いなと思ってしまったので、そこは突き進むのみなんですが。このご時世、こういう事あるじゃないですか、【漂白剤】のようなことがリアルに。だから観に来たお客様が、お芝居観に来てまでこんな思いしたくないよ、っていう人がいっぱいいるかもって思うんですけど、私が観て欲しいのはそういうとこじゃなくて、生き様であって、そこに居る人を観てほしいということであって。後は、色々余白がいっぱい、めちゃくちゃあるじゃないですか。

「まあ余白だらけだからね(笑)」

N だからそれが、今ってすごく親切に、頭からケツまでお客様にわかり易いものを作ることを求められることが多いじゃないですか。作り方にもよるとは思うんですけど。だからここまで委ねてるって言うか、観た側に何とでも取れる、観た側の生き様も反映されるって言うか、そういう台本だなって改めて思ったんですよね、読んで。だからそれがすごく面白いです。やっぱり今後もこういう芝居をやりたいし。

お話はどうでもいい

「まあでも、さっきも言ったように、お話はどうでもいいんだよね。」

N うん、そうなんですよね、たしかに。大事なんですけどね、お話って。でも【漂白剤】はそういう事じゃないっていうか。

「でも結果、**的な**的な話になっちゃったけど、そういう話がやりたかったわけじゃないから。多分、お客さんが観終わって『話は暗かったけど面白かったね』とか、」

N いっそ『話は好きじゃない』くらいに言い切っていただいても。私はご自由に、と思っております。

「『でも、なんか良かったね』っていう風に思ってもらえたら成功かな。」

N なんか心に残る表情だったりとか、フェチみたいなのがわかるんじゃないかな、って。私は***とこが好きですね。あそこは絶対カットしないでください!

「じゃあプロデューサー命令で、そこはカットせず残しましょう(笑)」

―続く


【ストーリーはどうでもいい】の真意は?

劇場でぜひ体感してください!

ナミプロ本もお楽しみに!

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